ちゃんと書いたはずなのに、読まれない。商品の良さも説明したのに、誰も買ってくれない。
そんなとき、文章のうまい・へたより先に疑ってほしいのが、「誰に向けて書いたのか」(ペルソナ)がぼんやりしていないかです。
「たくさんの人に読んでほしい」と思って書いた文章ほど、誰の心にも引っかからずに流れていきます。逆に、たった1人を思い浮かべて書いた文章は、その人と似た悩みを持つ人にまで届きます。
この「たった1人」を決める作業が、ペルソナ作りです。
この記事では、ペルソナの作り方を5ステップで紹介します。ターゲットとの違い、埋める10項目のテンプレートと記入例、AIで深めるときのプロンプトと直し方、よくある失敗まで、まとめて分かるようにしました。読み終わったら、あなたが書く文章の「1人」を決められるはずです。
ペルソナとは「たった1人の読者」のこと

ペルソナとは、あなたの文章や商品を届けたい「たった1人の人物像」のことです。名前・年齢・仕事だけでなく、悩み・本音・普段使う言葉まで決めて、実在する1人のように描きます。
よく似た言葉に「ターゲット」があります。違いは、「層」か「1人」かです。
| ターゲット | ペルソナ | |
|---|---|---|
| 決めるもの | 届けたい人の「層」 | 届けたい「1人」 |
| 例 | 30代・男性・会社員 | 32歳のユウキさん。平日は残業で帰りが21時。副業を始めたいけど、何から手をつければいいか分からない |
| 分かること | 誰に向けた商品か | どんな言葉なら刺さるか |
| 使う場面 | 商品や企画の方向を決める | 文章を1行ずつ書く |
ターゲットだけでも、方向は決められます。でも「30代の男性会社員」に向けて書こうとしても、具体的な言葉は出てきません。30代男性会社員といっても、悩みも言葉づかいもバラバラだからです。
「ユウキさん」まで決めると、「21時に帰ってきて、疲れた頭で読む文章なら短いほうがいいな」と、書く言葉まで決まってきます。
ペルソナを決めると文章が変わる理由
ペルソナを決めると、文章が「みんなへのお知らせ」から「1人への手紙」に変わります。読む人は「これ、自分のことだ」と感じたときにはじめて、続きを読んでくれます。
たとえば、副業のライティング講座を紹介する文で比べてみます。
ペルソナなし:このライティング講座は、文章を書くすべての人におすすめです。初心者から上級者まで、幅広く学べます。
ペルソナあり:平日は残業で、使えるのは寝る前の30分だけ。そんな会社員でも、1日1レッスンずつ進められる講座です。
上の文は間違っていません。でも「すべての人」と言われると、読む人は「自分の話じゃないな」と感じます。下の文は、当てはまる人にだけ「まさに自分だ」と刺さります。
正直に言うと、上の「ペルソナなし」の文は、僕が最初に書いていた文章ほぼそのままです。みんなに買ってもらいたくて「すべての人におすすめ」と書いていました。でも、これでは誰にも響きません。
ペルソナの作り方5ステップ

ペルソナは、次の5ステップで作れます。最初は30分〜1時間あれば十分です。
- 書く目的・届けたいものを決める
- 思いつく人を書き出す
- 材料を集める
- ペルソナシートを埋める
- 1文にまとめる
ステップ1:書く目的・届けたいものを決める
まず、この文章を読んだ人に、最後に何をしてほしいかを決めます。
「記事を読んで、ライティングの勉強を始めてほしい」「商品を買ってほしい」「メルマガに登録してほしい」など、ゴールが決まると、必要な人物像も決まってきます。
売るものがまだない人は、「読んだ人に、どんな一歩を踏み出してほしいか」で大丈夫です。
ステップ2:思いつく人を書き出す
次に、その文章が役に立ちそうな人を、思いつくだけ書き出します。
このとき、実在の人から考えるのがおすすめです。友だち・同僚・家族の中で「この人にこそ読んでほしい」と思える人はいませんか?
もう1つ、とても使いやすいのが「過去の自分」です。
僕はブログを始めたとき、「誰に向けて書けばいいか分からない」状態でした。そこで、会社の人間関係がしんどいのに転職する勇気もなく、毎日なんとなく過ごしていたころの自分を思い浮かべて書くことにしました。すると、当時の気持ちをリアルに思い出せるので、めちゃくちゃ書きやすくなったんです。
過去の自分なら、実績がなくても誰よりくわしく知っています。
ステップ3:材料を集める
頭の中の想像だけで作ったペルソナは、自分に都合のいい人物になりがちです。そこで、実際の人の声を集めます。
| 集める場所 | 見るところ |
|---|---|
| Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイト | 悩みを書いた人が、どんな言葉で困っているか |
| Amazonのレビュー | 似た商品・本を買った人が、何に満足し、何に不満だったか |
| XやYouTubeのコメント | 本音や愚痴、よく出てくる言い回し |
| 身近な人 | 直接聞ける。「何に困ってる?」「何を試した?」 |
とくに大事なのは、読者が自分の悩みをどんな言葉で言っているかです。あなたが「文章力を上げたい」と思っていても、読者は「何を書けばいいか分からない」と言っているかもしれません。文章に使うのは、読者の言葉のほうです。
ステップ4:ペルソナシートを埋める
集めた材料を見ながら、次の章の「10項目」を埋めます。分からない項目は空けておき、あとで材料を足して埋めます。
ステップ5:1文にまとめる
最後に、シートの内容を1文にまとめます。
〇〇(どんな人)が、△△(悩み)で困っていて、□□(なりたい姿)を目指している。
この1文を、文章を書く前に毎回読み返します。僕も記事を書く前には、「今日は〇〇で悩んでいる人に向けて書こう」と決めてから書き始めるようにしています。
ペルソナシートに埋める10項目(テンプレート)

ペルソナシートは、年齢や仕事などの基本情報より、「悩み・本音・言い訳・普段使う言葉」に時間をかけるのがコツです。文章の言葉を決めるのは、下半分の項目だからです。
コピーして使ってください。
【ペルソナシート】
1. 基本情報(名前・年齢・仕事・家族をひとことで):
2. 1日の過ごし方(平日と休日。文章を読むのはいつ・どこで?):
3. いちばんの悩み:
4. その悩みで困っている具体的な場面:
5. 本当に欲しいもの(表で言うこと/本音):
6. 今までに試したこと・うまくいかなかった理由:
7. 行動しない言い訳(時間がない、お金がない など):
8. 情報を集める場所(検索・YouTube・X など):
9. 悩みを自分の言葉で言うと(口ぐせ):
10. 読み終わったあと、どうなってほしいか:自分で考えるところ:5番の「本音」
いちばん大事なのは、5番の「本当に欲しいもの」です。
人は、表では「スキルアップしたい」ときれいなことを言います。でも本音では、「同期に置いていかれたくない」「会社に頼らずに稼げる自分になりたい」と思っているかもしれません。
本音を考えるときのヒントになるのが、ドルー・エリック・ホイットマンが著書『Cashvertising(邦題:現代広告の心理技術101)』で紹介したLF8(人間が生まれつき持っている8つの欲求)です。「恐怖や痛みから逃れたい」「他人に負けたくない」「社会的に認められたい」などの欲求のうち、どれがこの人を動かしているかを考えると、本音が見えてきます。
ただし、本音を知るのは、相手の弱みにつけこむためではありません。相手が本当に必要としているものを、ちゃんと届けるためです。
記入例:このサイトの読者を1人にしてみた
このサイトは、「副業で文章を書いて稼ぎたい、30代の会社員」を中心に書いています。それを1人のペルソナにすると、たとえば次のようになります(人物は例として作ったものです)。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 1. 基本情報 | ユウキさん、32歳、独身。メーカーの会社員で一人暮らし |
| 2. 1日の過ごし方 | 平日は残業で帰りが21時ごろ。寝る前にスマホでYouTubeを見る。休日は昼まで寝てしまう |
| 3. いちばんの悩み | このまま今の会社にいて大丈夫か不安。でも何をすればいいか分からない |
| 4. 困っている場面 | 給料日に明細を見て、「10年後もこの額なのか」とため息をつく |
| 5. 本当に欲しいもの | 表:副業で月5万円。本音:会社に頼らなくても生きていける自信 |
| 6. 試したこと | 副業の本を2冊買ったが、読んで満足して終わった |
| 7. 言い訳 | 平日は疲れていて時間がない。文章は苦手だった |
| 8. 情報を集める場所 | YouTube、X、Google検索 |
| 9. 口ぐせ | 「何から始めればいいか分からない」「AIって結局どれ使えばいいの?」 |
| 10. 読後にどうなってほしいか | 今日の寝る前の30分で、最初の1本を書いてみる |
ここまで決まると、「寝る前の30分で読める長さにしよう」「『文章が苦手でも』という一言を入れよう」と、書く前から文章の形が見えてきます。
AIでペルソナを深める方法
AIは、自分で埋めたペルソナシートを「広げる」「抜けを見つける」役に使うのがおすすめです。ゼロから「ペルソナを作って」と頼むと、それらしいけれど実在しない、平均的な人物が出てきやすいからです。
UX調査で知られるアメリカのNielsen Norman Group(NN/g)は、新しい調査をせずに作るペルソナを「proto-persona(仮のペルソナ)」と呼んでいます。NN/gによると、proto-personaはチームのまちがった思い込みを強める「エコーチェンバー(同じ意見だけが響き合う状態)」になりやすく、調査で確かめる「仮説」として扱うことが大切だとしています(出典:NN/g「3 Persona Types: Lightweight, Qualitative, and Statistical」、2020年)。
AIが作ったペルソナも同じです。それっぽく見えても、まだ仮説。だからこそ、材料集め(ステップ3)とシート埋め(ステップ4)は自分でやってから、AIに渡します。
コピペ用プロンプト
ChatGPTもClaudeも、無料プランで試せます(2026年11月時点)。ChatGPTならchatgpt.com、Claudeならclaude.aiを開いてログインし、入力欄に次の文を貼り付けて送信してください。
あなたはマーケティングにくわしい編集者です。
下の【ペルソナシート】を読んで、次の3つをしてください。
1. この人が言いそうな悩みの言葉を、本人の口ぐせのように10個
2. この人が、行動しない(買わない・始めない)理由を5個
3. シートの中で、ぼんやりしていて文章に使いにくい項目と、どう具体的にすればいいか
【私が書く文章】
(例:副業でライティングを始めたい人向けのブログ記事)
【ペルソナシート】
(ここに、自分で埋めた10項目を貼る)自分で考えて埋めるのは、【私が書く文章】と【ペルソナシート】の2か所です。ここが空っぽだと、AIは平均的な答えしか返せません。
AIの答えの直し方
AIの答えは、そのまま使わずに次の3つで直します。
- 実在の人が言わなそうな言葉は消す:「キャリアの持続可能性に不安を感じる」のような、きれいすぎる言い回しは使わない
- 集めた材料と見比べる:知恵袋やレビューで実際に見た言葉に近いものだけ残す
- 使った言葉の反応を見て、シートを直す:書いた文章の反応がよくなければ、ペルソナがズレているサインです
ペルソナが決まったら、それをAIに文章を頼むときにも使います。僕はAIに記事を頼むとき、「ペルソナはこういう人」「キーワードは〇〇」と、最初に読む人の情報を渡すようにしています。読む人が分かると、AIの答えも的を外しにくくなるからです。
ClaudeやChatGPTへの頼み方をもっと知りたい方は「Claudeで文章作成するコツ6つ」を、AIでセールス文を書く流れは「セールスライティングをAIで書く方法」を読んでみてください。
ペルソナ作りでよくある失敗3つ

ペルソナ作りでよくある失敗は、「項目を盛りすぎる」「自分に都合のいい人にする」「作って終わる」の3つです。
| 失敗 | どうなる? | 直し方 |
|---|---|---|
| 1. 項目を盛りすぎる | 血液型や好きな食べ物まで決めて疲れる。文章には使わない | 文章の言葉を変える項目(悩み・本音・言い訳・口ぐせ)に時間を使う |
| 2. 自分に都合のいい人にする | 「すぐ買ってくれる人」になり、文章が甘くなる | 7番の「言い訳」をしっかり書く。迷っている人を描く |
| 3. 作って終わる | 書くときに見返さず、いつもの文章に戻る | 5ステップ目の1文を、書く前に毎回読む |
とくに3つ目は見落としがちです。作って満足してしまうと、ペルソナは役に立ちません。
ペルソナの作り方でよくある質問
Q. ペルソナは何人作ればいいですか?
1つの文章につき、1人です。ブログやメルマガ全体で考えるなら、中心の1人を決めたうえで、必要なら2〜3人まで増やす形で十分です。最初から何人も作ると、結局どの人にも書けなくなります。
Q. ターゲットだけ決めれば十分ではないですか?
商品の方向を決めるだけなら足ります。でも文章を書くときは、ターゲットだけだと「どんな言葉で書くか」が決まりません。文章を書くなら、ペルソナまで決めましょう。
Q. 売る商品がまだなくても、ペルソナは作れますか?
作れます。むしろ、商品がないうちに作っておくと、「この人には何が必要だろう?」から商品を考えられます。迷ったら「過去の自分」をペルソナにして、そのころの自分が欲しかったものを考えてみてください。
まとめ:まずは「過去の自分」を1人目のペルソナにしよう
ペルソナの作り方を、もう一度まとめます。
- ペルソナとは、文章や商品を届けたい「たった1人の人物像」のこと
- ターゲットは「層」、ペルソナは「1人」。文章の言葉を決めるのはペルソナ
- 作り方は5ステップ:目的を決める → 思いつく人を書き出す → 材料を集める → シートを埋める → 1文にまとめる
- シートは基本情報より「悩み・本音・言い訳・口ぐせ」に時間をかける
- AIは、自分で埋めたシートを広げる役に使う。出てきた答えは仮説として、材料と見比べて直す
まずは、1年前の自分を思い浮かべて、ペルソナシートの3番「いちばんの悩み」と9番「口ぐせ」だけ埋めてみてください。その2行が書けたら、あなたの文章はもう「みんな」ではなく「1人」に向かい始めています。
ペルソナが決まったら、次はその人に「良い変化」を伝える番です。「ベネフィットとは?特徴との違いと書き方」で、伝え方を練習してみてください。
